海のそばで、波音を聞きながら読書をする。
そんな時間を過ごせる場所が、香川の島にはあります。
本を読みに、あなたも島へ行ってみませんか。
本を読みに、島に。
・小豆島の本屋 TUG BOOKS
・男木島図書館(Coming soon)
・こども図書館船本のもり号(Coming soon)
島民や旅の人たちの止まり木のような本屋

小豆島土庄港から車で約10分、富丘八幡神社の馬場から浜辺に向かっていくと、古民家を改装した小さな書店「TUG BOOKS(タグブックス)」があります。
オープンすぐにお店へ行くと、いつものような仕草でカウンターに腰掛け、コーヒーを注文するご年配の男性と店主の田山直樹さんがにこやかに談話するようすをしばしば見かけます。

店内には自然科学や人文書、海外文学、児童書、リトルプレス、ZINEなど約2000冊の個性豊かな本が並んでいます。
本だけでなく、愛らしい文具や紙雑貨の販売もあり、奥のカフェでコーヒーを飲みながら、購入した本を読んでゆっくりするといった過ごし方もできたり。トークイベントやワークショップなども積極的に開催し、島民や観光客の交流が生まれる場所でもあります。
東京、名古屋でジュンク堂書店員を7年経験後、小豆島に移住

田山さんは、本が好きだった母の影響か、物心ついた頃から本が大好きでした。大学卒業後には、本好きが高じて丸善ジュンク堂書店に就職し、東京、名古屋の店舗を7年経験しました。
小豆島に初めて旅行で訪れたのは東京に暮らしていた時。小豆島で「タコのまくら」主催のカヤックツアーに参加し、その自然やそこに暮らす人に惹かれたと言います。それから名古屋の店舗に移動してからも、田山さんは小豆島へ度々通うようになりました。
次第に、忙しない都会の日々を疎ましく感じ、自分の好きな場所を見つけて、根差すように暮らしたいと思うようになり、何度も訪れていた小豆島についに移住しました。
築60年の民家を改装して本屋をオープン

移住後は土庄町地域おこし協力隊で3年間、移住者相談などに携わりながら、自身の活動として、友人のカフェや浜辺での読書会などを続けたのち、2022年8月末に築60年の民家を自ら改装してTUG BOOKSをオープン。
仕入れる本はすべて自身で選んだうえで仕入れています。「会社員時代と違い、店で販売する本はすべて自身で買い取っているため、本の売上がダイレクトに家計に響くシビアさを感じています」と田山さん。
自分の店を持つ楽しさを感じる一方で、良くも悪くも大手書店員時代には経験しなかった想定外のことがたくさん起こりました。
本との出合い、島民と旅人との出会いが生まれる場所

TUG BOOKSを訪れるお客さんの割合は小豆島で暮らす人と観光客が半々。20代~70代まで幅広い年代の方が集まっています。
「本屋がないと、世界の多様性に触れる機会が狭まってしまうと思うんです。
SNSだとアルゴリズムで自分が興味のある情報しか届けてくれない。でも本屋はふらっと立ち寄れば、自分の知らない情報に出合える。そういう場所って今すごく必要だと思うんです。
それに地方は都会ほど情報に触れる機会が多くないように思います。未知のものと出会える本屋の存在意義は、地方ほど重要なのではないでしょうか」
島ののんびりとした空気がそうさせるのか、お客さんとの距離も近く、たくさんのみかんや野菜、魚など差し入れをいただくこともしょっちゅうあります。

TUG BOOKSの店先の浜辺から見える小豆島(あずきしま)
田山さんと観光のお客さんが話していると、お茶をしていた島のお客さんが「ここに行くといいよ」とおすすめスポットをアドバイスしてくれたり、またある時は、村上春樹好きのお客さん同士が出会い、盛り上がることも。
「小豆島では人と人との交流のハードルが低いので、観光の方と常連の島の人が初対面で楽しそうに話しているのを見ると、こちらも嬉しくなります」と田山さん。
また、依頼者の読書傾向などを書いた問診票をもとに本を選書し送るサービス「ブックカルテ」にも登録しています。選書した本を送るときに、手書きの手紙とともに田山さんが撮影した小豆島の風景写真を1枚送っているそうで、北海道から東京、関西など島外に住んでいる依頼者が後日、TUG BOOKSまで訪ねてくることもあるのだとか。
「ブックカルテを通じて小豆島を知ってくれて、わざわざ当店まで足を運んでくれたことや少しでも小豆島の観光に貢献できたことが嬉しいです」
自分でZINEを作って届ける楽しさを知る

田山さんが作ったZINE。2025年の自身の日記から再編集し、島の日々やお店でのエピソードなどを綴った『書店航海日誌』と、スーパーカブへの愛が詰まった『スーパーカブと島暮らし』
最近、文学フリマの開催から香川でも、個人や少人数で制作、発行する自主的な出版物「ZINE」を作る人が増えている中、田山さんも自身でZINEを作り、販売しています。
2025年には小豆島で暮らす7人のメンバーとともに「しょうどしま民俗座談会」を立ち上げ、かつてあったけれど今はもうない島の景色を覚えている人から聞き取りしたZINE『いとなみ』を発行し、2026年8月にはvol.2も発売しました。

vol.1では、炭鉱があった頃の暮らしや、採石業をきっかけに島内各所から人が移り住んだことでできた灘山集落のこと、半世紀にわたって小豆島や豊島、大島など瀬戸内で暮らす人を撮り続けてきた島の写真家について取り上げています。
直接感想が寄せられたり、個人的な島の思い出を聞かせてもらったり、古い資料や写真を譲り受けることもあったりと、場があることの大切さを感じていると言います。
「本を売る楽しさは知っていましたが、ZINEを作ったことで本を作る楽しさも知ることができました。自分の作った物を買ってくれる人がいることがこんなに嬉しいとは…。病みつきになりそうです。また、『いとなみ』を手に取った方がかつての島の風景や暮らしについて語り出す瞬間に立ち会うことも多く、本屋という場所を開いていたからこそこうした話を直接聞くことができるのだな、とも思います。つくづく本屋をやっていてよかったです」
小豆島に暮らす人にもこの喜びを味わってほしいとZINEのWSやイベントも精力的に開催し、シーンを盛り上げています。
お客さんにとっての隠れ家のような本屋でありたい

田山さんがおすすめしてくれた本と、小豆島の農家HOMEMAKERSのジンジャーシロップのソーダ
田山さんと話していると、「どこどこの本屋さんでね……」と好きな本屋のエピソードがぽろぽろと溢れ出してきます。田山さん自身がコアな読者であることはもちろん、大の本屋ファンであることがよく伝わってくるのです。
本との出合い、豊かな日常や旅のひとときを後押ししてくれるTUG BOOKS。「お客さんにとっての隠れ家のような本屋でありたいです」と田山さんはそっと言います。
今後は2階を自身で改装し、本をゆっくり読める場所を拡張したり、30分ほどじっくりヒアリングして選書するようなサービスも始めたいと考えているそうです。

TUG BOOKS
香川県小豆郡土庄町淵崎甲1926
11:00〜18:00
営業日 土・日・月・火
Instagram @tugbooks_shodoshima
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