
城の眼
石の念仏・の火のあしあと
・風は裂ける空・の灰色の
鳥のさえずり・神々の沈黙
・をしずかに・しずかに木
木は音を発する・しかし島
島が見えない・の対話に・
は魚をかくした・が起伏を
よみがえらせる・水の・月
の夜の旅は・石の念仏・土
の壁に・河は消えていく・
と・石の声があった………
秋山邦晴
店名「喫茶 城の眼」は喫茶空間の音楽デザインを担当した秋山邦晴の詩文のタイトルから店名が決まった。詩文は上記の通り。

石のスピーカー・ボックス
これまでスピーカー・ボックスといえば、木製でした。しかしスピーカー・ボックスの第一の条件は堅く、そして振動(びりつき)がないことです。この点、木製よりはコンクリート製、さらにそれよりも石でつくることができれば最高なのです。
当店では、奥山重之助氏の考案、岡田石材製作により、世界最初の石のスピーカー・ボックスを完成、備えつけることができました。
みなさまお聴きのように、これは純粋に〈生の音〉だけがサウンドするというすぐれた性質をもっております。
当店では、今後ともこれを珍品としてではなく、このスピーカーの最大の特徴であるリビング・トーン(生きている音)の特性をいかして、よい音楽を音楽的な再生で−これをモットーとしていきたいと考えております。

入店すると両側には高さ2m近くある庵治石をくり抜き加工して製作された石のスピーカーが設置されている。スピーカーの石彫は東側を秋山邦晴、西側を空(田中)充秋がデザインした。
空充秋は東京オリンピックの際、選手村(1964)に野外彫刻と照明を兼ねた庵治石のスピーカーをデザインしている。このスピーカーは、保存・解体で議論が巻き起こった宮崎県都城市の都城市民会館に移設されていた。現在、建物は取り壊されているが、市内の別施設に移設保存されている。このスピーカーの原型とも言えるスピーカーが当店に設置されているとも言える。
石のスピーカーから流す音楽については、秋山邦晴が選曲したレコードが説明書と共に納品され、今も店内で流されている。視覚デザインのみならず、聴覚までデザインする試みにより、当時の思想や志向を体現した空間デザインとなっている。なお、レコードの入れ替えが大変だったため、現在はレコードの音源をCDへ録音したものが流されている。
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