Passion for Architecture［株式会社 菅組］「心地いい場所とは？」建築のプロが思うこと

香川県で建築の設計・施工を手がける株式会社菅組。
「風景をつくる」という理念のもとで生み出される建築への思いを
同社で設計を手がける建築士に聞きました。

建築デザインが風景をつくる

建築士 小野 学

　豊かな自然に囲まれた三豊市仁尾町。父母ヶ浜沿いにはいくつもの店が立ち並び、訪れる人を惹きつけています。菅組の建築士・小野学さんは、こうした商業施設の多くで設計を担当しました。
　大学時代はデザインを専攻。デザイナーの間宮吉彦氏が大阪・南船場を中心に展開したプロジェクトが今につながる原点だといいます。「ある一店舗がきっかけで人流ができ、点と点がつながって面の賑わいになる。店舗デザインの面白さを感じました」　
　卒業後は大手の設計事務所に入所。しかし、大規模施設の設計では関わる人数も多く、業務の範囲は限定的でした。さらに小規模店舗は早いと３年で入れ替わることも。次々と移り変わるサイクルに疑問を感じていたともいいます。
　２００７年に帰郷後は、設計士として菅組に入社。休み時間には父母ヶ浜を散歩し、退勤後にはSUP。時には自転車で山を越えて出勤したりと、仁尾の自然を満喫する日々を送ります。そんなとき、浜の清掃活動を行う「ちちぶの会」からパンフレット制作の依頼が舞い込みました。「趣味のカメラ片手に大好きな浜の写真を撮り集めました」。以来、小野さんは父母ヶ浜の様々なプロジェクトに関わることとなりました。

父母ヶ浜に佇む「百歳書店」。どの方向から見ても美しく見える方形の屋根に

県産ヒノキを余すことなく使用した開放的な店内

「長く使えるデザイン」こそが自分の答え
「建築設計は自分の携わったものが長く残っていく仕事。建物は風景をつくります。だからこそ責任も大きい。どうあるべきか、常に考えなければ」と語る小野さん。例えば父母ヶ浜の店舗設計では、焼杉や石などの自然素材を使うようにしています。「そうすれば、姿形が違ってもおのずと景観に統一感が生まれます」
　また、極力シンプルな設計とし、作り込みすぎないことも意識しているといいます。「数年単位でつくり変えてしまうのではなく、個人の好みや時代を超え長く使い続けられるデザインとは何かを追求しています。その上で、全体の調和がとれていて、品のある美しい建築物を目指しています」

燧灘をのぞむO邸。伸びやかなウッドデッキからの眺めを主役に設計（平成25年度 香川県建築士会 優秀賞 受賞物件）

周囲の景色との一体感を大切に。屋根の勾配は山の稜線を損なわない角度とした

　こうした考え方は住宅設計においても共通しています。「同じ敷地は二つとありません。だからこそ、土地の高低差や眺望といったさまざまな敷地の特徴を読み活かしつつ、快適で楽しく暮らせるようなプランを提案します」。
その上で、どんなインテリアも包容する飽きのこない空間づくりを目指しているといいます。
　もう一つ、設計で大切にしているのは「お客さんの要望を超える」ということ。すなわち「言葉を額面通り受け取るのではなく、その裏に隠れた本音を引き出すことを大事にしています。少しでも違和感を感じたら何度か尋ねて
みたり。そして真意を汲み取り、優先順位をつけて解決すること。それが私の役割だと思っています」。毎日の仕事が楽しい、と屈託なく笑う小野さん。「これからも感動してもらえる、いい仕事を続けていきたいです」と語ります。

コンクリートとクライアントがヨーロッパで買い付けしてきたアンティーク、異素材と新旧の融合を目指す

樹齢1900年のオリーブを中心に非日常観を感じられる中庭空間

二級建築士
インテリアコーディネーター
小野 学　Ono Manabu
香川県出身。
大阪芸術大学デザイン学科卒業。
大阪の建築設計事務所・店舗デザイン事務所での勤務を経て、2007年Uターンを機に株式会社菅組へ入社。
店舗・住宅·一般建築の新築からリノベーションまで幅広く手がける。

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株式会社 菅組
［本社］香川県三豊市仁尾町仁尾辛15-1
tel.0875-82-2441
［高松］香川県高松市郷東町23-7
tel.087-882-6387　
https://www.suga-ac.co.jp