vol.20

四国中央市・仙龍寺|四国文化遺産

伽藍が覆う仙の谷、
千の灯と先への祈り

 四国の真ん中に位置する愛媛県の四国中央市は、紙の町として知られている。豊富な水資源がそれを可能にしている通り、ちょっと山に入ると巨大なダム湖が姿を現す。水面を眺めながら走り続けると、切り立った山奥の谷間に、忽然と垂直の多層構造をした寺院が。

誰もが圧倒される前面部分は通夜堂と呼ばれ、大人数が泊まれるような構造になっている

あまりに急峻な崖に建つので入り口から圧倒される。数年前に崖崩れもあったそう

 ここは四国別格二十霊場の一つで、その名も仙龍寺。崖の上に立っているため、伽藍全体がコンクリートで作られた地面の上にある舞台造りとなっている。地面といってもビルと橋が一体になったような複雑な構造で、下には沢が流れ小さな滝もある。その人口土地の上には車が何台か止めれるほどの大きなスペースもあり、寺院の外観は古い旅館のような佇まい。

崖に沿って建っているので長い廊下も複雑。今が何階にいるのかも分からなくなる

古い旅館か学校の木造校舎のような外観に対して、本堂は小ぶりだが存在感は凄い

 壁のような外壁からは中が何階建てなのかも分からない。まるで千と千尋の神隠しに出てくる油屋のような独特の建築だ。中に入ると大きな廊下を抜け、古い旅館のような幅広の階段を上がる。その先には護摩壇を備えた小さな本堂があり祈り続ける人の姿が。

夏祭りは施餓鬼会とも呼ばれ、飢えや渇きに苦しむ霊魂を救済し徳を積む儀式も行われる

 毎年9月の第一土曜日の夕方には、ここで先祖供養と施餓鬼会が行われる。宵闇に多数のろうそくの灯りが浮かび上がり、周囲は一層幻想的な空気に。見たところ部外者は自分くらいで、参加している人はほぼ地元の方たち。視えないものへの真摯な祈り。夏の終わりのダム湖の湿度と蜩の虫の音が、それらを空から包み込んでいた。


写真・文
宮脇慎太郎
1981年生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、日本出版、六本木スタジオなどを経て独立。在学時より国内外に旅を繰り返したが、2009年の奄美大島での皆既日食体験を期に完全に高松に着地した。2016年より瀬戸内国際芸術祭公式カメラマン。専門学校穴吹デザインカレッジ講師。2021年香川県文化芸術新人賞受賞。主な著作に「曙光」「霧の子供たち」「UWAKAI」「流れゆくもの 屋久島・ゴア」などがある

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宮脇 慎太郎

1981年生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、日本出版、六本木スタジオなどを経て独立。在学時より国内外に旅を繰り返したが、2009年の奄美大島での皆既日食体験を機に完全に高松に着地した。2016年より瀬戸内国際芸術祭公式カメラマン。専門学校穴吹デザインカレッジ講師。2021年香川県文化芸術新人賞受賞。主な著作に「曙光」「霧の子供たち」「UWAKAI」「流れゆくもの 屋久島・ゴア」など

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