書店に行こう —古本屋店主という人
古本屋に行ったことがありますか?
いくつもの手を経て店にたどり着いた古本は、
色褪せない味わいを持ち、独特の魅力を放っています。
同じ本でも、店によってどこか違って見えるのは、
その一冊に古本屋店主の人柄が映し出されているからかもしれません。
古本屋の店主とは、一体どんな人なのでしょうか。
古本屋店主という人
・【古本屋YOMS】本と人の交差点となり、物語をつないでいく
・【讃州堂書店】時代を見つめて半世紀、まちの記憶を受け渡す
・【なタ書】路地裏にある「予約制」古本屋の深層
photo Gomi Shunsuke
波乱の青年期を救った、古本との出逢い
店舗の目の前を琴電の赤い電車が駆け抜ける、松島町の線路沿いにある老舗古書店「讃州堂書店」。1977年の創業から、もうすぐ50年になります。店主の太田育治さんは、この店とともに時代の変遷を辿りながら、70代になった今も開店当初と変わらず、年中無休で店に立ち続けています。
「振り返ってみれば、すべての出来事が古本屋を開くための必然だった」と、開業までの道のりを語ってくれた太田さん。
青年期は景気が不安定な時代で、就職した会社は次々と倒産し、なかなか安定した職に就くことができなかったと言います。

高松市出身の画家・林哲夫さんが筑摩書房のPR誌「ちくま」の表紙のために書いてくれた同店のイラストを眺めながら、半生を語ってくれました
住み込みの季節労働を求めて上京し、神田にある製本屋で働くことに。
古本屋街で有名な神田での日々は、太田さんの人生に新たな光を灯しました。休日の古本屋めぐりで本の魅力に惹き込まれ、気がつけば、手元にはたくさんの良質な古本が積み上がっていたのです。
就職がうまくいかないなら自分で起業しようと考え、香川に戻って古本屋を開業します。
時代の波を越えて確立した本棚の中身
開店当初、古本は飛ぶように売れました。
当時は人気の漫画シリーズなど大衆ウケの良い本をたくさん置いていましたが、そのうちバブル景気や大型古本チェーンの隆盛により、個人店を訪れる客が減っていきます。多くの個人店が姿を消す中、太田さんは生き残りをかけて「どこでも買える漫画や文庫は売らない」と、売れ筋の入荷をやめました。

店内奥の棚には、郷土資料がぎっしり並べられています
そして、他店にはない専門書や、香川の歴史を物語る「郷土資料」を集め、そのうち目録を手書きで作成し、香川県立図書館などにその貴重な「郷土資料」を収蔵・保存してもらえるよう、資料が消滅していくのを防ぐ活動も続けています。
また、ある日の不思議な体験をきっかけに「UFO関連本」をコレクションするなど、太田さんの好奇心やこだわりが棚に詰まった独自の世界観を築いています。


客層も時代とともに変化してきました。
近年は若者や外国人客も増え、本だけでなく愛らしい看板猫を目当てに訪れる人も。昭和レトロな古い雑誌などを求めて来店する10代〜20代の若者も多いと言います。
「スマホで何でも見られる時代だからこそ、実際に古本を手に取って手ざわりを楽しむことが、一つのレクリエーションになっているのかもしれないね」

太田さんはどこか飄々とした佇まいで、移り変わる時代の変化を優しく見守るように見つめています。「いろいろ考えても仕方ない。なるようになるのが運命だから」と、決して休むことなく店を開け、今日も静かに客を迎え入れる太田さん。
そんな讃州堂書店は、時代が変わっても変わらない「手ざわりのある時間」と、忘れずに繋いでゆきたい「まちの記憶」を、訪れた人にそっと差し出してくれます。

讃州堂書店
香川県高松市松島町2丁目1-9
10:00〜19:00
年中無休
087-834-1533
https://sansyudo.base.shop
X @furuhonsansyudo
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