書店に行こう —古本屋店主という人
古本屋に行ったことがありますか?
いくつもの手を経て店にたどり着いた古本は、
色褪せない味わいを持ち、独特の魅力を放っています。
同じ本でも、店によってどこか違って見えるのは、
その一冊に古本屋店主の人柄が映し出されているからかもしれません。
古本屋の店主とは、一体どんな人なのでしょうか。
古本屋店主という人
・【古本屋YOMS】本と人の交差点となり、物語をつないでいく
・【讃州堂書店】時代を見つめて半世紀、まちの記憶を受け渡す
・【なタ書】不思議な吸引力で独特の世界を生み出す|古本屋店主という人
photo Gomi Shunsuke
訪れた人を迷宮へ誘う古本の隠れ家
2006年、高松の中心地の路地裏にオープンした、完全予約制の古本屋「なタ書(なたしょ)」。予約制という一見高いハードルがありながらも、今では県内外だけでなく海外からも多くの人がここを目指してやってきます。

店主の藤井佳之さんは東京の大手出版社に勤めたのち、高松へUターン移住。当時、東京では中目黒の「COW BOOKS」をはじめ、古本の新たな価値を提供するユニークな個人店が生まれ、書店のあり方が変わり始めた時代でした。「でも、高松にはそういう古本屋はなかった。ないなら自分で作ろう」と。

そこで「一人で気軽に始められ、他の仕事とも両立しながらできる」として考えたのが、予約制というスタイル。
「誰もが入りやすいコンビニのようなお店ばかりが増えていた時代だったから、安易に迎合せず、カルチャーとしての緊張感や格好良さを残したいという気持ちもありました」。

店内には、幾重にも棚が積み上げられ、マニアックな専門書から大衆向けの本まで、所狭しとありとあらゆるジャンルの本が隙間なく並べられています。


何度訪れてもまた新しい発見がありそうな、迷宮のような空間。そこに藤井さんの独特な佇まいが相まって、一度足を踏み入れると吸い込まれるような不思議な吸引力を放っています。

気負いなく、若者の心に響く何かを
訪れる人は圧倒的に若い世代が多く、旅行客が観光スポットのひとつのように予約を入れてやってくることも珍しくないと言います。
藤井さんはそんな若者たちの人生相談にものります。一見近寄りがたい雰囲気もありながら、会話の端々や店内の空気から感じられるのは藤井さんの懐の深さ。
その居心地のよさに、思わず長居してしまう人が多いのも納得です。

「次の世代を生きる若い人たちが予約して来てくれて、自分が生まれる前に作られた古い本を『面白い』とか『かっこいい』と言って買ってくれる。若い世代にバトンが渡っていくのは嬉しいし、彼らがこのお店をきっかけに自分も頑張っていこうと思えるような場所でありたいと思っています」

これからの展望を尋ねると「特にないんですよ」と、淡々と語る藤井さん。
「家賃も格安だから、辞める理由もないし、無理に拡大する気もない。日々続けていく中で、何か新しい面白さが見つかればそれでいい」
人と本に真摯に向き合うからこその言葉には嘘がなく、それがまた人を引き寄せるのでしょう。その気負いのなさで、「なタ書」はきっとこれからもずっと、訪れた人の好奇心をゆるやかに揺さぶってくれます。

なタ書
香川県高松市瓦町2丁目9-7 2F
完全予約制(不定休)
070-5013-7020
https://natasyo.com/
なタ書店主藤井さんによる、IKUNAS掲載コラム「あぁ、本があったんだなって」はこちら↓
毎度、特集テーマに合わせて選書を行っています。




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