ロッコク沿いのアンソロジー
食の記憶を探し、旅して集めた物語
ロッコク・キッチンなる
ROCKな試みを始めた人たち
ロッコク・キッチン。ポップでいてロックを感じるタイトルのこの本をどうして取り扱いしたのか記憶がありません。ですが理由は思い当たります。ノンフィクション作家である、川内有緒さんがお店に来られた際、私はいつもと変わらず酒を呑み続けていました。その隙間をついて川内さんの営業を喰らってたのでしょう。川内さんは今年『エレベーターのボタンを全部押さないでください』(ホーム社)というエッセイ集を書かれていて、その本にこの夜のことが描かれています。ですが、そこに登場する私の描写は全く記憶に無く、これはフィクションだと今でも思ってます。後日届いた『ロッコク・キッチン』は判型も装丁もキュートでクール。まあこれなら良いかとお店の一等地に並べました。おそらくですが、500冊限定で作られたこの本は当時さほど話題になってなかったかと思います。現に調べると取り扱いしていた本屋は全国で22店舗。一万店舗以上ある本屋の中の22店舗に当店は選ばれたのです。そしてどうやらどこの本屋でも完売。気づけばこの本の問い合わせを各地から私が一身に背負うことになりました。
このコラムでは担当からテーマをもらって紹介する本を選びます。今回のテーマは「食のギフト」です。食のギフト? ざっくり過ぎるでしょう。ですが私はなんら動じませんでした。再版された『ロッコク・キッチン』があるからです。福島県の太平洋側を通る国道6号線(通称ロッコク)沿いの町に住む人々から公募した12編のエッセイが収録された本書。芯食う試みはこれから多大な贈り物を届ける旅へと出るでしょう。映画として、講談社より刊行された書籍として。そのギフトを受け取った皆さんは、ロッコク・キッチンプロジェクトの渦に私同様に巻き込まれるでしょう。このプロジェクトのプロデューサーである渡辺陽一さんは「ユーモアやアートが足りていない」という言葉を使われています。私とこの本の出会いはユーモアでもアートでも無く、ただ酒だったのかもしれません。ですが福島にある「読書屋 息つぎ」という野外の本屋を始めた25歳の青年に、あー、本屋があるのって最高だよって素面でロッコクまで伝えに行きたいのです。

「ロッコク・キッチン」
川内有緒 ロッコク・キッチン・プロジェクト(株式会社植田印刷所)
発行 2024年2月
1,430円
藤井 佳之
なタ書店主。四国は高松にて完全予約制の本屋を営む。
なタ書
香川県高松市瓦町2丁目9ー7 2F(瓦町駅から徒歩5分)
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