
職人が使い続ける、さぬきの手しごと品
独楽塗り盆
使うのは 漆原早奈恵さん
私の一生より長く続くもの
独楽塗りの盆を20年以上使っています。漆芸に携わる者として「漆は一生ものって言うけれど本当かな」と思っていた部分もあり、祖母の家にあったこの盆を譲り受け、実際に確かめてみることにしました。一つは箱に仕舞ったまま、一つは毎日タフに使ってみて経年変化を追っています。
実際に使ってみると、私には扱いやすかったですね。机に置いても違和感がなく、この模様はちゃんと滑り止めになっていて理にかなっている。昔の人はよく考えたものだなと。
亀裂や欠けはたくさんあります。壊れたらその都度直して使っています。案外強靭なんですよ。表面の漆が落ちて木肌が見えてきていますが、まだまだ使えます。毎日酷使しているのに。だからやっぱり、どんどん使うのが本来の漆器の姿なんだと思います。

数年前に香川県漆芸研究所で指導する立場になって、後輩たちに何を伝えたらいいんだろう?と考えたんですが、あ、目の前の漆器が教えてくれているじゃないか、と気づいたんです。私が生まれるずっと前に木が切り倒され、挽かれて盆になり、祖母宅で眠っていて。私よりずっと早くに生まれて長く残っていくものなんだと思ったら、自然と「使わせていただきます」という気持ちになりました。
漆は縄文時代からある素材です。せっかく長生きな素材を扱っているのだから、子へ孫へと大事に受け継がれていくようなものをつくりたいです。特に、ボンボニエールや棗など小さくても技巧を凝らしたもの、メモリアルな時を祝うものに、じっくり時間をかけ取り組みたいです。


どんどん新しい作風が生まれる中で、一人ぐらいは古いものを修復して喜んでいる漆芸家がいてもいいかなって。そして、その一人がつくった作品が後世にひょっこり発掘されて「うわ、何だこれ!」って思ってもらえたら、その横にこの独楽塗り盆があったら、きっと面白いですよね。
漆原早奈恵 Urushihara Sanae
香川県高松市生まれ。高松工芸高校金属工芸科を卒業後、富山大学にて漆芸を学ぶ。目白漆芸文化財研究所にて修復に従事したのち独立。帰郷し、作家活動および修復に精進中。漆のアクセサリー制作や金継ぎ教室を行う。
□ re:craft /IKUNASではうつわの金継ぎを実施しています ▶詳細はこちら
photo Tokumaru Naruhito
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