香川県の西讃地区に残る「やつおの家」。男前な職人集団が、古民家の風格と誇りを蘇らせる。

September 29,2017

  • 香川の建築

やつおの家って知っていますか?香川生まれの私も、そんな名前があることを今回の取材で初めて知りました。小さな香川県でも西と東で文化は少しずつ違っています。昔から瓦の産地として知られる西讃では、屋根瓦を美しく飾ることがステイタスでした。
「尾」(お)と呼ばれるのは屋根の尾根部分。まるで神社やお寺のように二層になった屋根に、鬼瓦がでーんと鎮座して住む人を守る。でも香川にはいわゆる「鬼面」の鬼瓦って少ないんですね。そこは穏やかな土地柄というか、松竹梅や鷹、鳳凰などおめでたいモチーフが「装飾瓦」として選ばれていたようです。

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香川県の西端、四国山脈を望む財田町で見たやつおの家は、それはそれは見事な家でした。
築100年の母屋には、見事な梁がゆるやかなカーブを描きながら交錯していて、屋根にはこれぞ鬼瓦!という立派な鬼面が。でも何よりかっこよかったのは男前の職人さんたちでした。古い家を壊して新築する。シンプルに考えればその方が利益は大きいかもしれません。古い家を直す場合、修復に必要な材料を探したり、調整したりかなりの経験や技術、そして時間が必要になります。一見、非効率とも思える仕事を引きうけ、住み継げる家に生まれ変わらせるのが「讃岐やつおの家保存会」の匠たちです。

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今回、イクナスの特集『住み継ぐということ』では改修したやつおの家に集まっていただいての対談を企画しました。内容はかなりマニアックでしたが、皆さんの言葉の節々に「やつお愛」が感じられ、お互いを尊敬し合うとても仲の良いチームでした。そして皆さん自分の仕事に誇りを持っている。瓦屋さん、木材屋さん、建具屋さん、畳屋さん。そして古民家鑑定士の山田さんとお施主様。貴重なお話をありがとうございました。瓦も土も木も畳も自然素材は呼吸をしながら、家主とともに生きています。耐震のこと管理のこと。考えなくてはならないことはたくさんありますが、やつおのが家が讃岐からなくなってしまう前に、ぜひ匠たちに相談してみてください。

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Photo by Masahide Nakamura

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