職人であり芸術家である。穏やかな表情の中にその両方が見え隠れする。

November 29,2017

  • 工房をたずねて
  • 香川の伝統工芸

金刀比羅宮、通称「こんぴらさん」への参道沿いに店と工房がある「山中象堂」。象堂と初代の名前であり、3代目の竹志さんにとっては祖父にあたる人物だ。「最も尊敬する人」としてその名を挙げた初代は芸術家肌であり、店内に貴重な作品も残っている。後を継いだ2位代目の父は「職人にもなれんやつは芸術家になれん」と言った。竹志さんはどっちなんだろう―。インタビューに応える表情からはその両方が見え隠れする。

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編集部:家業を継ごうと思ったきっかけは?
山中さん:特に覚えてはないけど、子どもの頃から職人さんがいてものづくりをしている環境というのは常だったから自然なことだった。親父に大学ぐらい行け、と言われて京都の大学で仏教を専攻し、シルクロードを旅したり仏像を見て歩いたり。今思えば自分もそういう、ものづくりの世界が好きだったんだと思います。

編集部:どんな気持ちで彫っていますか?
山中さん:ものをつくるにはイメージする力が必要。立体のものを彫るには、より細かなイメージが必要になる。その一方でアンコールワットの壁画に描かれているような、抽象化されたデザインを見ると、そういうものも彫れるようになりたいと思う。

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編集部:長く続けられた秘訣は?
山中さん:仕事がおもしろくなるかどうか。自分で考案したへたり達摩が売れた時のことは、今でもよく覚えてますね。中学の美術の先生が買ってくれたんんだけど、自分の仕事が認められた気がしてうれしかった。
編集部:座右の銘は?
山中さん:継続は力なり。自分はもともと不器用なんだけど、だからこそ頑張れたと思う。
お客さんに「名前は象堂だけど、まだまだ小象(小僧)じゃないか」と言われたことがあって。常にそういう気持ちは忘れないようにしています。

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編集部:尊敬する人は?
山中さん:祖父ですね。3歳の時に亡くなりましたがよく覚えています。芸術家でしたが親父は「職人にもなれんやつが芸術家にはなれん」とよく言っていたので、自分もまだまだだと思うけれど、いつか自分の中から生まれる作品をつくりたい。
編集部:期待しています!ありがとうございました。

休日などはほとんどなく、日々仕事場で過ごすことが多い山中さんは、「無意識にここにいることを選んでいる気もする。結局は仕事が好きなのかもしれなけれど、いつか時間が許せば、人がたやすく登れないような高い山に行ってみたい」と話す。心どこまでも自由だ。

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