木肌を見るとその気の本質がわかる。磨けば光るのか、節が出てくるのか。 切り口を見るとその木が育った環境や場所もだいたいわかる。
November 20,2017
- 工房をたずねて
- 雑誌IKUNAS
- 香川の伝統工芸
もともと手を使うことが好きだったをという上野さんは、21歳の時に讃岐一刀彫の道に入り、約半世紀以上にわたり彫師として活躍されています。主に「肥松」を使って制作されていましたが、最近は材料が入手しづらくなったこともあり、いろいろな木材で一刀彫の可能性を追求されています。穏やかでやさしい語り口はまさに「ジェントルマン」。木と真摯に向き合う姿は、木の精のようでもあります。どこか飄々とした表情で、風雨に耐えしっかりと根を張る「強さ」のようなものを感じさせる作品は、「木を知ること」から生まれます。
編集部:一刀彫にもいろいろな作品がありますが、上野さんが思う魅力とは何でしょうか?
上野さん:職人それぞれの知恵と努力が作品を通じて見れるところです。そして、それが自分の作品の参考になるところですね。
編集部:ちなみ上野さんが得意とするところは?
上野さん:できる限りの細かい細工ですね。一生懸命に作った作品でも、時間や日にちを置いてみると必ず足りないところが見えてきます。眺めては直し、直しては眺めるという繰り返しをしながら作品をつくっています。
編集部:もう50年以上続けてきた中で、わかったことはありますか?
上野さん:まず肥松の場合は原木の良し悪しの見分け方。
何を彫るかは木を見て判断します。固そうで艶が出そうか、木肌に凹凸があれば中に節が隠れている可能性が高いので見極めが大事です。切り口の年輪を見れば、その木が育った環境や場所、土の質などが総合的に判断できます。木も人と同じで、厳しい環境で育った木は風合いが出るし、やっぱり木はおもしろい素材です。見ると聞くでは大違い。見るとつくるではまた大違い。ものをつくることは日々発見。精進と思っています。
編集部:仕事の息抜き方などありますか?
上野さん:妻と買い物に出かけたり、外の空気を吸うこと。あとは家の中や壊れたものの修理。そして彫刻刀を研ぐこと。研いでいると不思議と仕事への意欲がわいてきます。
編集部:最近、感動したことは?
上野さん:見るからにやんちゃそうな若者が、街中の困っているお年寄りに思いやりのある行動をしている様子を見た時、すごくかっこいいと思いました。そうした若者が増えてほしいですね。
編集部:生まれ変わったら何になりたいですか?
上野さん:プロボクサーです!
編集部:ストイックなボクサーと一刀彫。全く違っているようで、どこかリンクしているような気もしますね(笑)ありがとうございました。
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