IKUNASf「瀬戸内海食ラボ」課題に取り組む高松西高生の力に
July 03,2020
- IKUNASf
6月24日、香川県立高松西高等学校で地域の課題を検証するプログラム、「かがわ創生講座@西高」が開講されました。昨年に引き続き、「瀬戸内海食ラボ」の方々が地産地消・食文化コースで郷土料理の押し寿司をつかった地域活性化プランを紹介するとのことで取材をさせていただきました。
IKUNAS fは、「瀬戸内海食ラボ」の時代に合わせた讃岐の郷土料理を伝承する活動(今あるおいしいものと先人の知恵が合わさったわくわくする食の取り組み)に注目をしています。
▶︎昨年の「かがわ創生講座@西高」
【講座の内容】
・瀬戸内海食とは
・郷土料理・押し抜き寿司の歴史的背景
・「さぬきOSHINUKI寿司」の提案とこれまでの活動
・春祝魚(はるいお)と鰆、鰆漁、和三盆と希少糖について
・郷土料理・押し抜き寿司と さぬきOSHINUKI寿司の比較
・代表者の「さぬきOSHINUKI寿司」実習
□瀬戸内海食ラボとは
農業や食にまつわる取材をしてきたライターの岡林さんと多田さん。香川大学大学院 地域マネジメント研究科で学びMBA(経営学修士号)を取得した西村さんがタッグを組み、時には楽しく時に真面目に、瀬戸内海地域の食文化の豊かさと多様性を伝えている女性3人組です。
□瀬戸内海食とは
健康食で世界無形文化遺産に登録されている「地中海食」と「和食」、それらの良いところに、瀬戸内ならではの郷土食や文化を加えた、瀬戸内海食ラボが提唱する多様性のある瀬戸内海沿岸の新しい食文化のこと。
まず、瀬戸内海食ラボの取り組みとともに「瀬戸内海食」についてスライドを用いて説明がありました。瀬戸内海食ラボは、瀬戸内海食を普及させるために、香川の海・山・平野の恵みを使う香川の郷土料理・押し抜き寿司から「さぬきOSHINUKI寿司」を開発し、体験するワークショップを重ねています。
「さぬきOSHINUKI寿司」は、今あるおいしい食材を使用したり、可愛い形に変えたり、ご飯の量も減らすなど、現代の家庭でも取り入れやすい工夫がほどこされています。
例えば、押し抜き寿司で使用する鰆を讃岐さーもんに、そら豆や山椒の葉を苺(さぬきひめ)やパセリ(大内パセリ)へと、讃岐の恵みの中で置き換えます。また、四角型や扇型などが主流だった木型を、円いオリジナルな形に変えています。円形の木型は大井建具店の職人さんに製作を依頼。形と大きさが変わっても、押し抜き寿司の醍醐味である”押し抜き”ができるように試作を重ねました。完成した木型により、従来の作り方を守りながらも時代を捉えた新しい押し抜き寿司が誕生しました。
伝統的な郷土料理・押し抜き寿司については、現物や紙芝居などを用いながらレクチャー。昔ながらの春祝魚(はるいお)や、瀬戸内海で獲れる鰆の特徴、漁法などについても説明します。
□香川の鰆について
関東などでは冬がおいしいと言われる鰆。瀬戸内の旬は春から初夏で、産卵のためしっかり脂が乗った鰆が外洋から瀬戸内海に入り、流し刺し網漁は最盛期を迎えます。瀬戸内海の漁では、網目のサイズを大きくして、小さな鰆を獲りすぎないように気をつけられています。網に刺さった状態で上がってくるので、瀬戸内海産の鰆には、体に首輪のような1本の線が入っているのが特徴です。
□春祝魚について
麦刈りと田植えを控えた香川県の農家には、鰆を一匹丸ごと買い求め、親戚縁者にサワラ料理を振る舞う「春祝魚」という風習があります。春を祝い、麦刈りや田植えを前に鋭気を養います。身は刺し身や焼き魚、真子はフキとソラマメとの煮付け、白子は白みそ仕立ての汁と豪勢なサワラ料理が並び、押し抜き寿司が主役に。また、農繁期を前に、結婚して間もないお嫁さんは里帰りが許されました。婚家では丸ごと1匹の鰆を持ち帰らせ、お嫁さんは実家で鰆の押し抜きずしをつくり、手土産に戻ってきます。鰆と押し抜きずしが行き来して、婚家と実家の仲を取り持ったといわれています。
□押し抜き型で押し抜く楽しさを伝える
従来の押し抜き寿司をリノベーションした「さぬき OSHINUKI寿司」の説明が終わると、いよいよ実践です。今回は、讃岐さーもん、苺、クリームチーズ、パセリの押し抜き寿司をつくってもらいました。
寿司にフルーツやクリームチーズを組み合わせる斬新さに戸惑う生徒もいましたが、楽しそうにつくり上げ、1個目の押し抜き作業を失敗した子も、2個目をつくる時には綺麗に仕上げていました。
真剣かつおもしろそうにつくる生徒たちを見ながら、「楽しんで郷土料理に触れてもらうことが一番。」と瀬戸内海食ラボさんの3人。先人の知恵とともに、「瀬戸内海食ラボ」のイノベーションへのチャレンジを伝えることで、これから「探究の時間」に取り組む西高生たちが、課題を見つけ、アイデアを創出するための参考になれれば、また、少しでも若い人に郷土料理を知ってもらえたらと、講師を引き受けているそうです。
これからもIKUNASfは、香川で食に関わることを生業にしている方々と一緒に、讃岐の食について情報を集め発進していく取り組みを進めていきたいと考えています。