香川漆芸と香川漆器。お盆や椀物など日用品から芸術作品まで幅広く存在するのが香川の漆器のおもしろいところかもしれません。

September 29,2017

  • 雑誌IKUNAS
  • 香川の伝統工芸

香川漆芸の歴史は江戸時代後期から始まり約200年。漆器そのものは縄文時代からあったとされていますが、装飾品や武具などごく一部の高貴な人のためのもので、一般的に使われるようになったのは、近代になってから。長い歴史の中ではまだまだカオスな状態ともいえます。

朱色や「漆黒」と呼ばれる、独特の輝きは憧れの存在でありながら、その素材となる漆(ウルシの木の樹液)は、人が触るとかぶれてしまうことも。加工が難しく、一度塗るとしばらく触れないという特質からも、なんだか現代のスピードや合理性とはかけ離れた存在のような気がします。

ところが香川県には「蒟醤(きんま」と呼ばれる漆芸技法で人間国法に認定された先生が3人もいらっしゃるのです。そして、その巨匠たちから技術を学べる香川県漆芸研究所もあります。研究所では香川漆芸の三技法と呼ばれる「蒟醤」(きんま)」「存清(ぞんせい)」「彫漆(ちょうしつ)」の技術の習得をめざして、多くの人材が育っています。
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それぞれの技法については前号のIKUNASvol.5で詳しく紹介していますが、どの技法にも「彫り」の技術が入っていることと、鮮やかな色漆が使われていることが特徴です。漆器といえば、金沢の華麗な薪絵をイメージされる方も多いかと思いますが、香川漆芸にはまた違った魅力があります。明治以降になると、三技法に加え伝統的工芸品として「後藤塗(ごとうぬり)」と「象谷塗(ぞうこくぬり)」の2つの技法が加わり、香川漆芸の五技法として確立されました。

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現在、私たちが普段使いしているのは、香川漆器と呼ばれるものがほとんど。漆芸作品となると美術館や漆芸研究所でなければ見ることができませんが、機会があればぜひ足を運んでみてください。その幅の広さや奥行き、艶やかな輝きにきっと魅了されるでしょう。そしてもっと触れたくなったら…ぜひ毎日使えるお気に入りの漆器を、1つからでも手元に置いてみてください。

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