『工房をたずねて 02』心にふれる、織りもの(保多織)

March 31,2017

  • 工房をたずねて
  • 香川の伝統工芸

岩部保多織本舗 伝統工芸士 岩部卓雄

さらりと、丈夫
 パタンパタンと昔ながらの手織り機の音。高松市の繁華街にある工房兼店舗に入ってみるとどこか懐かしく、やさしい風合いの洋服や小物が、所狭しと並んでいる。高松市の「岩部保多織本舗」は讃岐の織物として知られる「保多織」の織元。4代目で伝統工芸士の岩部卓雄さんが、その技術を今に伝えている。


「多年を保つ」織物として知られる「保多織」は、文字通りの丈夫さと、ふっくらとした風合いを兼ね備えている。その秘密は平織りをアレンジした独自の織り方。3回平織りで打ち込み、4本目の糸を浮かせることで生地にワッフル状の空気層ができ、これにより「夏はさらりと、冬も寒さを感じさせない」という特長が生まれる。シャリ感のある生地は、使い込むほどに肌になじみ、愛着がわく。寝る時も仕事をしている時も、出かける時も、365日保多織を着ているという岩部さんは「僕は寒がりなんだけど、着た瞬間の冷たい感じがなくてホッとするんだよね」と、シャツの袖を撫でながら、やわらかく笑う。


手織りには夢がある
 織りはかつて、すべて人の手で行っていたが、時代とともにほぼ機械の仕事になった。現在は高松市林町にある工場で製造のほとんどをまかない、手織りはほんの一部。シーツなど幅の広いものや、服地用のしっかりした生地は機械の方が丈夫で安価に仕上がり、しかも早い。「でも、手織りにしか出せない風合いもあるから、少しずつでも増やしていきたいんだよね。手織りには夢があるから」と岩部さん。百貨店での催しなど、出先には織り機を持参し、合間をみてはコツコツと織り進めている。


 全国を巡りながら、行く先々に数十年来のファンを持つ保多織だが、一番人気は洋服。作務衣や浴衣からシャツ、ワンピースまで、オーダーを中心に展開している。また、名刺入れやハンカチなどの小物も手頃な価格で、暮らしに取り入れやすい。「今は冷暖房もあるし、モノや情報も溢れるほどある。結局何を信じるかってことなんだけど僕は自分の感覚が一番だと思ってるし、まずは直に触れてみて好きになってほしいな」と岩部さん。つかず離れずのほどよい距離感を保ちながら、手放せなくなる使い心地は保多織ならでは。色や柄も豊富なのでどんな用途にも合わせやすく、可能性が広がる。今後もどんな商品が生まれるのか楽しみだ。(IKUNAS FLAVOR OF LIFE vol.5 掲載記事)

岩部保多織本舗さんの商品はこちらIKUNAS web storeへ▶︎

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