私の好きなお茶の言葉は「喫茶去(きっさこ)」。これに尽きます。
「去」は「去る」と直訳するのではなく、「まあ、お茶でも飲みにいらしてください」というような意味です。
私がお茶を始めたのは、財団の事務局に就任した42歳の時です。財団での日常は貸茶室「美藻庵・晴松亭」の管理・運営が主な仕事です。茶の湯の現場を長年、側で見ながら、果たして茶の湯は未来に残していけるのかという危機感のようなものを感じていました。お茶にお誘いしても、自分には関係のない世界と感じている若い方がとても多いのです。 そこで、20年ほど前に財団が主催して「大茶会」を開催しました。流派や経験によらず、もっとお茶を楽しんでもらいたいと、あるエリアにお茶席をたくさん設け、一枚の券で巡るというイベントでした。大盛況でしたが、お茶の世界は狭まるばかりです。
そこで、最近では「略盆点前」を伝えるワークショップを始めました。お茶を点てる基本的な作法を伝えながら、茶の湯の魅力のあれこれをお話ししています。
茶の湯で大事なのはお茶を介しての「対話」にあると思います。大切なのはひとつの空間で、フェイス・トゥー・フェイスで話すこと。「喫茶去。まぁ一緒にお茶でも飲みましょうよ」。そんな声かけを、これからも続けていきたいです。

中條 晴之
1999年より中條文化振興財団事務局長。茶室「美藻庵・晴松亭」の運営や助成事業、出版事業などを通じ、お茶を通じた香川における文化振興に注力。2003年高松市文化奨励賞受賞。「略盆点前」のワークショップは、毎月第2・4火曜日に、自宅「残月亭」にて開催。
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