和田邦坊作:幻の「おとぼけ人形」を現代に復刻&オリジナルカードゲーム開発! 

2023年4月より販売スタート!

April 10,2023

  • 和田邦坊
  • 香川の伝統工芸

知られざる、ユーモアたっぷりな張りぼて人形

突然ですがみなさん、香川にこんなにユーモラスな人形があるってご存知でしたか?

発案者は一閑張(いっかんばり)伝統工芸士の宇野雄三さん、

絵付けと名付けは和田邦坊(わだくにぼう)が手がけました。

 

香川のものづくりや伝統工芸を取材する中で、IKUNAS編集部がこの人形に出会ったのは約10年前のこと。

一般販売が叶わなかったこの人形を何とか復刻したい…、そんな思いがようやく実を結び、この度「復刻版」として販売をスタートすることになりました。

さらに、人形をモチーフにしたオリジナルカードゲームも新たに開発しました。

ユーモラスでとぼけた顔の「おやじ」たちを運と勘で集める、大人も子どもも楽しめるゲームです。

 


「香川のデザインをつくった男」和田邦坊って?

所蔵:灸まん美術館

和田 邦坊 わだ くにぼう 1899―1992年

本名:和田邦夫。香川を代表する商業デザイナー、画家、新聞漫画家、文筆家。「成金おじさん」の風刺画や、帰郷後は県内各所の商品パッケージ、店内デザインなどを手がけました。栗林公園内「讃岐民芸館」の初代館長に就任するなど、県の仕事も引き受けました。

香川に住む人ならば灸まん・かまど・山田家といった名店のパッケージデザインで馴染みがあることでしょう。黒々とした筆文字や、民芸調のカラフルな色づかいが特徴です。

2022年9月発売IKUNASでも特集しています。

 

数々のデザインを生み出したアイデアマン・和田邦坊ですが、「おとぼけ人形」もその仕事の一つ。変わりゆく高度経済成長期に、「ストレスをユーモアで吹き飛ばそう!」と生み出されました。


伝統工芸士の手でよみがえった「おとぼけ人形」

復刻版「おとぼけ人形」の制作にあたっては、三人の伝統工芸士にご協力いただきました。

一人目は、宇野雄三さん。

着想当時の貴重なお話を伺いました。

若き日に和田邦坊に師事していた宇野さん。

もともと木彫などを手がけていましたが、讃岐民芸館設立を機に既に途絶えてしまっていた一閑張(いっかんばり:竹で編んだカゴなどに和紙を貼り、漆と柿渋を塗って強度を高めた生活の道具)の技術を復元。

自ら一閑張を制作するとともに、四国各地の民具の研究に携わったり、全国各地の民具を集めた民芸の工房を営むなど、多岐にわたって活動していました。

 

そんな宇野さんのふとしたアイデアから生まれたのが「おとぼけ人形」の原型となるもの。

そのアイデアを邦坊が面白がり、「おとぼけ人形」という名づけと絵付けを施したのでした。

 

和田邦坊と宇野さんが考案したおとぼけ人形を、次に紹介する現代の伝統工芸士2名が現代につなぎました。

二人目は、朝倉準一さん。

欄間彫刻伝統工芸士で、朝倉彫刻店の6代目を担う若き職人です。

復刻版の制作にあたっては、

・サイズを一回り小さくし、

・制作手法を「張りぼて」から「張子」へと変更しました。

張子では張りぼてとちがって、中に入れた木型を抜き取らなくてはいけません。

この木型を手がけたのが朝倉さんでした。

 

もともと河原の石が原型になっている「おとぼけ人形」は、左右対称に整っている形ではなく、想像以上に複雑な形をしています。

オリジナル版を目視しながら一回り小さい形を彫っていくのは至難の業です。

次なる張子の作業がしやすいよう、あえて表面をざらざらに仕上げるなど、細かい工夫も盛り込まれています。

 

三人目は、田井艶子さん。

三豊市に工房を構える「田井民芸」にて、主に節句に飾る張子虎を制作しています。

決まった形の虎に対して、「おとぼけ人形」の木型は不定形。

虎に比べると小さく、絵付けの仕方にも決まりがあるわけではありません。

イレギュラーだらけの「おとぼけ人形」は田井さんにとってもチャレンジングな取り組みとなったそうです。

江戸時代末期の古紙や書き古しの半紙に糊を塗り、ちぎって木型に貼り付けます。

 

小さいゆえ紙が重なり段になってしまうと悪目立ちやすい「おとぼけ人形」。表面をなめらかに仕上げるには一手間も二手間もかかります。

 

まさに石ころのような形ができました!

 

「自分の絵じゃないので難しいわぁ」と田井さん。大胆かつ慎重に筆を入れています。

通常、張子では紙を貼った後に胡粉(ごふん)という白い粉を塗って完成させますが、オリジナル版の質感を再現するために、胡粉の上からさらに和紙を貼り、素朴な風合いを出しています。

 


左から:かみなりおやじ/セリフを忘れた役者/おどるおやじ/考えるおやじ

数々の試作を経て完成した復刻版「おとぼけ人形」。

外箱は元のデザインや邦坊らしい色づかいを意識しつつ、tao.でデザインを行いました。

箱の中には「おとぼけ人形」の成り立ちをお伝えする小さなリーフレットも同封。

着想当時の想いを今に伝えています。

 

取材時の様子をまとめたムービーもぜひご覧ください。


オリジナルカードゲームもできました

ユーモラスな「おとぼけ人形」の世界をもっと多くの人に楽しんでほしい!とオリジナルカードゲーム「邦坊さんの おとぼけおやじかずあわせ」も新開発。

ゲーム制作にあたっては、香川県でボードゲーム作家として活躍している橋口剛志さんにご協力いただき、とぼけた「おやじ」を集めて数を競うゲームにしました。

パーツ制作は日美株式会社。県産ヒノキを使ったサイコロやトークン(コインのようなもの)が手にやさしくなじみます。

簡単なルールで、大人も子どもも楽しめる「おとぼけおやじかずあわせ」。ゲームを通じて和田邦坊デザインをもっと身近に感じていただけたら嬉しいです。

 


販売情報はこちら

香川のデザインとものづくりの楽しさがぎゅっと凝縮した、復刻版「おとぼけ人形」と「おとぼけおやじかずあわせ」は、以下の内容にて販売しています。

販売開始:2023年4月21日(金)~

販売場所:IKUNAS WEB STORE讃岐おもちゃ美術館shop灸まん美術館

販売価格:

復刻版「おとぼけ人形」 全4種/1体 7,700円(税込)

販売個数:初回限定で販売。完売の場合はご予約受付いたします。

邦坊さんの おとぼけおやじかずあわせ 2,970円(税込)

企画・販売:株式会社tao.

監修・協力:灸まん美術館

制作:復刻版「おとぼけ人形」 朝倉準一(朝倉彫刻店)・田井艶子(田井民芸)

おとぼけおやじかずあわせ ゲーム開発 橋口剛志・パーツ制作 日美株式会社

 

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