わたしだけの仁尾時間 ~IKUNAS編集部滞在レポ・多喜屋編 vol.2~
November 09,2020
IKUNAS編集部滞在レポ・多喜屋編vol.1の続きです。前編はこちらから
町の繁栄の名残は、いたる所に
ひと通り「多喜屋」を堪能した後、仁尾の町を歩くことにしました。この界隈は江戸時代には仁尾城のお膝元として発展してきた歴史を持っています。縦横にくねくねと伸びた細い路地にひとたび足を踏み入れると、その脇に漆喰の壁や日本瓦葺きのどっしりとした旧家が今なお残り、当時をしのばせる風景が見られます。かつては積み出し港として塩や米などの物資が豊富に揃う港町としての顔も持ち、「仁尾買いもん」という言葉も生まれたほど近隣からの買い物客で賑わったそうです。
そんな歴史を聞いて、車1台分ほどの幅しかない細い路地を歩くと、伝統的な焼杉の壁を持つ家も多く、タイムスリップしたような感覚に。まずは町のシンボルにもなっている煙突のある建物を目指します。こちらは、江戸時代から杉樽で米酢を製造する「仁尾酢」の醸造蔵。広い敷地をぐるりと焼杉が囲み、堂々とした存在感を放ちます。ほんのり酢の香りを感じながら歩いていると、風呂桶を持って歩く人とすれ違うことに気づきました。
すぐそばには、地元の人たちに愛される三豊で唯一の銭湯「大井温泉」があり、「多喜屋」に泊まればこちらの薪炊きの湯を楽しむこともできそうです。また、おいしいと評判の「伊藤製パン所」もすぐ近く。昔ながらのショーケースに入った揚げパンは、こしあんや芋あんなど。ひとくち食べると、子どもの頃に食べた甘く懐かしい味が口いっぱいに広がります。
そんなふうに中ノ丁界隈をぶらりと歩きながら、最後に訪れたのは覚城院。仁尾城跡でもあるこの場所は周囲よりも小高く、瓦屋根の家が建ち並ぶ町並みや燧灘のおだやかな風景が望めます。
ただいまと言いたくなる愛着の宿
日が暮れて「多喜屋」に戻ると、宿はライトアップされて幻想的な雰囲気に包まれていました。用意されたルームウエアは、伝統的工芸品にも認定されている「保多織」でつくられたもので、ガウンのように長めの上着にゆったりしたパンツのセットアップ。さっそく着替えてみると、肌触りが良くて着心地も抜群。座り心地のいいソファや木のぬくもりのあるダイニングチェアでくつろぎながら、夜更けまで話がはずみます。さながら我が家のような居心地の良さです。
暮らすように旅をするにはぴったりの「多喜屋」ですが、滞在する人へのホスピタリティには配慮が重ねられていて、家とはまた違った特別感も味わうことができます。例えば、いよいよ眠くなって潜りこんだ寝具には、マニフレックスのマットレスが採用。数種類から好みで選べる枕や保多織のシーツなど、贅沢な寝心地はすぐに夢の世界へと誘ってくれます。そんなふうに、滞在する時間をできるだけ快適に過ごせるようにと、上質な工夫が散りばめられています。
翌朝、指定していた朝食の時間になると、玄関のチャイムが鳴りました。開けると両手で抱えるほどの大きさの木箱を持った女性が一人。「おはようございます!」と笑顔で朝食を届けてくれたのは、ご夫婦で朝食を作ってくださっている小前さん。手際よく木箱を2つ部屋に運び込んでくれました。
開けるとおひつに入ったごはんや、たくさんの小鉢が並んだ一人分ずつの食事桶が入っています。この日のメニューは、鯛の味噌漬けや地元の三豊産野菜の白和え、香川の郷土料理であるお雪花(せっか)(=けんちゃん)*や、仁尾酢を使った酢の物など。県産野菜や郷土料理をふんだんに盛り込んだ料理に、「わぁっ」と歓声が上がります。お味噌汁もついてボリュームもたっぷり。伊吹いりこのだしがしっかり効いていて、素材の味を活かした品々に、朝から箸がすすみます。
また、おひつや食事桶は、伝統的工芸品である讃岐桶樽の技法でつくられたオリジナル。おかずが乗った小鉢は、作家モノや改修時に発見されたアンティークのモノなど、こちらも個性豊かです。
宿を後にする頃には、すっかり自分たちの家のように愛着を感じていた「多喜屋」での滞在。町の魅力を味わうとともに、古民家ならではの居心地の良さと、上質で職人の手仕事が垣間見えるような設えの数々に、心から満たされました。
多喜屋
住所:香川県三豊市仁尾町丁312
申込・問合せ:古木里庫 0875-82-3837(平日8時~17時)
詳細はこちらから
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