【工房をたずねて】香川県産漆を究める 和うるし工房あい 3
June 08,2020
IKUNAS vol.11「人生によりそう食」
連載「工房をたずねて」では、香川県・五色台(ごしきだい)の山中に自ら漆の木を植樹し、採取して漆器をつくる「和うるし工房あい」をたずねました。
【工房をたずねて】香川県産漆を究める 和うるし工房あい 1 の記事はこちら
【工房をたずねて】香川県産漆を究める 和うるし工房あい 2 の記事はこちら
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「嫁入り道具は、漆器を乾かすための乾燥器でした」と笑う宮崎佐和子さん。
夫の松本和明さんとともに「和うるし工房あい」を主宰しています。
押し入れほどもある乾燥器が備えられた部屋には、器に取り出した漆がたくさん並んでいて、それぞれにメモが記されています。
漆器好きな人からは、「何月に誰それさんが掻いた、何年ものの漆を塗ってほしい」とピンポイントの依頼が来るのだ、と松本さんが教えてくださいました。
・いつ掻いたか
・産地はどこか
・誰が掻いたか
・どのぐらい寝かせたか
愛好家は漆そのものや、塗った器を見るだけで、これらの情報が手に取るように分かるのだそう…。漆の世界の奥深さに驚嘆した一幕でした。
香川県で漆器といえば、「蒟醤(きんま)」「存清(ぞんせい)」「彫漆(ちょうしつ)」という伝統的な「三技法」を用いてつくられた作品が多くを占めます。
「三技法」はいずれも室町時代に中国や東南アジアから伝わった技法で、幾重にも塗り重ねた漆の層を彫り出して、模様を浮き立たせたり、溝に色を加えたりして図柄を表現するものです。したがって、「三技法」はこれらの地域で採れる柔らかい漆を使うことを前提として発展してきました。
一方、「和うるし工房あい」で使われる五色台産をはじめとする国産漆は、薄く堅く仕上がるという特徴があります。実際に手に取ってみると、透き通るような透明感があり意外なほど軽く感じられます。
松本さんは、目の前にある漆そのものを発端とし、その表情を生かして器を仕上げるために、どう技を磨いていくか、という順序で考えていきます。
「国産漆って、完成されていない。何をやってもね、ぱーっと扉が開く。開いた扉のその先に、また次の扉がある。その扉を押してみたら、また次の世界が広がっていく。その感覚がたまらなく面白い。どんどん新しいところに行きたい」と語る松本さん。
「自分が発見したことは、全部オープンにしてる。それを今後、実践してくれる若い人が増えていったなら、その先に広く深い文化として、国産漆というものの全体像が見えてくるんじゃないのかな」。漆の世界を究める旅は加速していくばかりです。
※「和うるし工房あい」提供
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【工房をたずねて】香川県産漆を究める 和うるし工房あい 3
IKUNAS vol.11「人生によりそう食」では
香川県産漆を自ら栽培・採取し、漆器をつくる「和うるし工房あい」をたずねました。
【工房をたずねて】香川県産漆を究める 和うるし工房あい 1
【工房をたずねて】香川県産漆を究める 和うるし工房あい 2
「和うるし工房あい」はIKUNAS vol.5「いま、気になるもの。」でもご紹介しています。