新たに刻み込まれる軌跡と、変わらぬ暮らしの風景
April 01,2019
丘陵地が続く香川県南西部のとある場所。地図には以前営業していた飲食店の名前がまだ表記されている。思ったより交通利便は良さそうだ。「古民家を改装して住んでみたいと思っていたんです」と話すYさんご夫妻は、兵庫県で出会って結婚し、奥様の故郷である香川へと居を移した。子どもの誕生を機に、縁側のある家でのびのびと子育てをしたいと家を探していたタイミングで、飲食業を営んでいた主人が店を閉めて、買い手を探していたこの家と出会った。
家屋は江戸時代後期から明治初期くらいに建てられたという。今までどれほどの人の営みを守ってきたのか? 見上げると規則正しく編みこまれた茅葺と、屋台骨を支える丸太の梁。かつての生活の軌跡は、先人から「今」の暮らしへのメッセージとなる。
のどかな景色。讃岐のこんぴらさんに行く道中を少し入った場所にその家屋は建っていた。
製材したものでなく、自然で育ったままの梁に向き合う。梁と屋根の間から隙間風が入らないように板で塞ぐ作業は、自然がつくる木の曲線に現場あわせの職人の感覚が冴える。
元の住人が寝室、水回りと増・改築している部分もあるが、若い住人は暮らしの軸を母屋に決め広いリビングを計画している。石場建てで使われている石は雨風受けることなく、この家屋が建ち上がる時から暮らしの礎を支えてきた。
梁の部分に何かのために掻いた跡。かつての暮らしの跡をたどり、想像が広がる。
2019.2 取材→追記取材中。
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