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地域×建築アーカイブ【story.1林業家と菅組】後編

はじめに:地域×建築アーカイブ|生かし、伝える。未来につなぐストーリー

建築とは、ただ建物をつくるだけの営みではなく、地域の風景そのものを形づくる仕事でもあります。その土地に根づく素材や技術といった地域の資源を生かすことは、ふるさとの景観や記憶を、未来へと受け継いでいくことにつながります。

山で木を育てる林業家、そしてその木に新たな役割を与える大工や職人たち。長い年月をかけて土地と向き合ってきた人々と、地域に根ざした建築を手がける株式会社菅組(すがぐみ)の代表・菅徹夫さんとの対話を通して、建築の役割や、地域資源を次の世代へと手渡していくための知恵や記憶をアーカイブしていきます。

前編:かがわヒノキの伐採ツアーがつなぐ森と建築

約60年にわたり、香川県まんのう町仲南地区で森と向き合ってきた林業家・豊田均(ひとし)さんと、そのヒノキを生かした家づくりを続ける菅さんは、「ふるさとの風景を守る」という思いを共有してきました。

まんのうの森を訪れた菅さんと豊田さんは、伐採から建築までをつなぐ「大黒柱伐採ツアー」の取り組みを改めて振り返り、木が暮らしへと届くことの大切さを語り合いました。

前編を読む:地域×建築アーカイブ【story.1林業家と菅組】前編

この後編記事では、豊田均さん・卓さん親子の森づくりへの想い、菅さんの思い描くこれからの建築のあり方について、対談をお届けします。

菅徹夫さん(写真右)
株式会社菅組代表。地域に根ざした建築を手がける一方、香川の里山の調査や、ビオトープや植樹活動など、自然と共生する環境づくりに取り組んでいます。2000年代初頭からは「讃岐の舎(いえ)づくり倶楽部」を運営し、香川県産ヒノキ材の普及にも尽力しています。

豊田均さん(写真中央)
香川県まんのう町仲南地区で森を守る専業林業家。大正初期に林業を始めた父の後を継ぎ、自身も林業科の高校を経て、60年超にわたり森に入り、健全な山を維持しています。菅さんの思いに共感し、当初から「讃岐の舎づくり倶楽部」に参画しています。

豊田卓さん(写真左)
徳島県の農業大学校林業分校で学び、卒業後は高知県の木材市場に勤務。その後独立して木材店を経営し、木材に関する知識と経験を積んできました。現在は祖父、父・均さんの後に続く林業家として、近い将来の家業継承を見据え、引き継ぎの準備を進めています。


明るい森づくりでふるさとの風景を守る

あいにくの雨ですが、山の中へと歩みを進めながら「これ(雨)もいいね」とつぶやく菅さん。一帯の木々は生き生きとうるおい、豊かな緑を輝かせています。

(以下、菅徹夫さん…/豊田均さん…豊田均/豊田卓さん…豊田卓 と表記)


豊田さんの森の特長は何といっても明るいことですよね。今日も雨ですがきれいで気持ちがいい。やはり、こまめな枝打ちの賜物でしょうか。

豊田均
そうですね。加えて、適切に間伐をするということも大切にしています。枝と枝とが触れ合うようになってきたら間引くタイミングです。木と木の間を適度に空けて余裕を持たせることで、木はさらに大きく育っていきます。


県内の山は、かつては切り捨て間伐(山林から搬出せずそのまま放置し分解させる林業技法)が主流でしたよね。ここではどうですか?

豊田均
ここでは搬出間伐を行っています。搬出コストや手間もかかりますが、森林組合で共同でチップ材へ加工したり、バイオ燃料にしたり、杭などの建築資材や集成材に加工したりと、うまく活用できています。


搬出間伐は大変ですが、その分、土壌を守る下層木(かそうぼく:人工林の下層に生えてくる低木や灌木)が育ちやすい環境になりますよね。

豊田均
そうですね。スギであれば大きい枝葉が落ちるのですが、ヒノキはポロポロとした茶色の細かい葉が落ちていくんです。この葉がどんどん地面に降り積もると、下層木にとって最適な土壌となります。

この下層木は、一見じゃまなように感じられますが、実は私たちの森づくりに欠かせない存在。というのも、下層木が根を張ることで山の土が守られ、土砂崩れの防止につながっているからです。針葉樹だけの単一な森ではそうはいきません。


枝打ちや間伐をほどよく行っていることで、森の下層まで風が通り、日も当たる。そうするとヒノキ林におのずと雑木が混生し、健やかな土壌が守られる。その結果、ヒノキもまた健やかに育つ。豊田さんの明るい森は、まさにこうした循環の場となっているんですね。

先の世代を見据え、山を守る森づくりを行う


大きく育って、伐期(伐りごろ)を迎えたヒノキはどのように伐採されるのでしょうか。

豊田均
先の話と同じく、本伐(ほんばつ:成熟した木を伐ること)でも山を守るということを意識しています。
針葉樹は、

一度伐るとその株は終わりです。ですから、一帯の木をすべて伐ってしまうと一気にはげ山となり、山が弱ってしまいます。

したがって本伐のときも、全て伐りきらずに少し残しておく。そうすると残った木が土壌を守り、山の環境を守ることにつながります。いずれ若い苗木を植樹したときに、大きな大先輩が守ってくれるようなイメージですね。


なるほど。何十年も先のことを考えながら森づくりを行っているんですね。

豊田卓
祖父の目標であった「無節材(むぶしざい:節のない上質な材)」を作ろうと思うと、良いヒノキを育てなくてはいけない。そのためには、まず良い森を育てなくてはいけない。

そのように考えて、森づくりに情熱を注ぎ、実行してきたんだと思います。祖父や父・均がつないできた明るい森、良いヒノキづくりを私も継承していきたいです。

林業の経験はまだまだこれからですが、材木店で働いていたので木がどう使われているかを深く理解しているのが私の強み。木材に関する知識・経験を生かして、林業に携わっていきたいです。

「木とともに」。その思いを未来へと受け継ぐ

菅さんが主宰する「讃岐の舎づくり俱楽部」が発足した2000年代初頭、日本の建築における国産材の利用はわずか18%程度にとどまっていました。

それから約四半世紀が経った今、全国の国産材利用は40%超へと増加。「国産材は環境によく、日本の気候風土に合っているという認識が、お客さんの間でも進んできている」と菅さんは語ります。

国産材や県産材活用への理解がすすみ、木材の地産地消がバランスよく進むことで、山に適度に手が入りふるさとの風景が守られていく――菅さんと豊田さんは、そんな未来を目指しています。


「大黒柱伐採ツアー」はこれからも続けていきたいです。全体から見ると小さい事業かもしれませんが、自分たちの家のもととなる木がどんな場所で生まれたのか、その現場をお客さんに知ってもらうことは、とても意味のあることです。

そして地域の木材を積極的に使うことで、林業という仕事を支えることに微力でも繋がったらうれしいですね。

私たち菅組は「木とともに」というメッセージを掲げています。宮大工集団から発足した私たちにとって、木造建築には特別な思い入れがあります。今は鉄筋コンクリート造や鉄骨造で手がけている大規模建築を、いずれは木造でも手がけていき、木造建築を増やしていきたい。そう思っています。

「大黒柱伐採ツアー」開催情報

株式会社菅組では「大黒柱伐採ツアー」を定期開催しています。

香川県まんのう町の専業林業家・豊田均さんの森をたずね、ヒノキの伐採に立ち会う「仲南の森 大黒柱伐採ツアー」。実際に新築する家の大黒柱になる樹齢100年ほどのヒノキが、住まい手さんや見学者の見守る目の前で、
豊田さんの手によって伐採されます。

伐採を見守り終えたら、特製弁当を気持ちの良い山の上で食べたり、楽しい座談会も開催。
伐採の現場を間近で見られる貴重な機会です。

▼2025年度の開催の様子
https://www.suga-ac.co.jp/info/event/entry-5303.html

以上、株式会社菅組提供
▼2026年度の開催については、菅組ホームページをご確認ください。
https://www.suga-ac.co.jp/


株式会社 菅組
本社:〒769-1406 香川県三豊市仁尾町仁尾辛15-1
https://www.suga-ac.co.jp
TEL. 0875-82-2441

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IKUNAS(イクナス)編集部

香川・四国のヒト・モノ・コトを伝える雑誌IKUNAS(イクナス)の編集部です

  1. かがわヒノキ×広げる[HINOKI NEWS]香川県での様々な取り組み

  2. かがわヒノキ×出かける|[施設紹介]木の空間を体感できるお店や施設

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